ヒョウガは戦場に行くたびに生きて帰ってきた。
つまり、彼は誰も愛していない。
シュンはヒョウガに愛されていない。

だというのに彼は、生きて帰ってくるたびに、愛してもいないシュンを抱きしめ、本来なら愛する恋人に与えるはずのものをシュンの中に放つことを続けていた。
それを残酷なことだと思い、つらく感じながら、それでもヒョウガの生還は嬉しい。
朝目覚めた時に、シュンの横で力強く脈打っているヒョウガの心臓を確かめることは、シュンに安堵の吐息を運んできた。

『生きていてほしい』と『愛してほしい』――相反する二つの望みの中で悩み抜き、やがてシュンは、ヒョウガに対して、生きていてくれさえすれば愛してくれなくてもいいと“感じる”ようになっていった。

「生きていて……!」
ヒョウガに身体を貫かれるたび、ヒョウガの下でシュンはそう口走り喘ぐ。
「生きていて、もっと、ずっと、生きていて……!」
と。
その望みも、ヒョウガは叶えてくれた。






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