翌日、米国フォックス・フィルム・カンパニー社の株式の49%を持つコナコーラ社が その全保有株式をグラード財団に売却する決定をしたことがプレス発表され、正式にグラード・ピクチャーズ・エンターテイメント社が設立した。
これで、グラード財団は、映画大国に星の数ほど蓄積されている映像ソフトの約25パーセントの販売・上映権を手にすることになる。

プレス発表の翌日には、フォーシーズンズホテルで新法人設立記念式典が催される手筈が整っていた。
パーティのホストは新法人の新社長だが、実際の主役は、この計画を推し進め成功させたグラード財団の若き総帥 その人だった。
米国から招かれた綺羅星のようなゲストたちも、この日ばかりは主役の周辺を回る衛星にすぎない。

当日の朝、いつもの通り沙織は氷河と瞬に身辺警護を依頼したのだが、彼女自身はそのパーティに彼等を伴うことに あまり乗り気ではないようだった。
「今日のパーティは要注意人物が大勢やってくるから……もし嫌なら、今回はパスしてもいいのよ? 私は構わなくてよ。たまには星矢にも仕事をさせなくちゃ」
「目一杯めかしこんでお供しますよ。これで沙織さんの警護の仕事まで星矢たちに押しつけたら、それこそ星矢に何を言われるかわからない」

沙織に任務遂行の意思を示してから、氷河は、同席していた瞬に、
「おまえは目立たないようにしていろ」
と、とってつけたような言葉を吐いた。
改めてそんなことを言われなくても、氷河と一緒にいれば自然にそういうことになるのに――と、少しく沈んだ気持ちで思いながら、瞬は彼に小さく頷いたのだった。






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