シュンの心を確かめることのできたヒョウガは、それから、稚拙ながらも懸命にシュンを口説き始め、シュンにヒョウガの国で共に暮らすことに同意させた。 シュンは、自分の今の命はヒョウガに拾ってもらったようなものだから、その命を与えてくれた人のためにそれを使いたいと、実に健気なことを言い、ヒョウガを喜ばせてくれた。 恋に慣れていない不器用な二人は、それでも少しずつ恋人同士らしくなっていったのである。 明日には懐かしい故国に帰れるという日、シュンの国での最後の夜。 セイヤは実に良い気分で寝台に横になった。 死にかけていた国を生き返らせ、人の命を救い、美味いものをたらふく食べて、明日は無事に国に帰ることができる。 シュンの国がヒョウガの国に併合されれば、この国のあの料理法も やがては両国共通のものになるに違いない。 そんなことを考えながら、セイヤは満ち足りた気分で、シュンの国での最後の夜を安らかな眠りで締めくくろうとしていた。 が、残念ながらその夜、セイヤは 眠りによる満足を手に入れることはできなかったのである。 「あ……ん……」 それは最初は小さな囁き――のようなものだった。 セイヤは、それを、どこかの部屋の窓から忍び込んだ春の夜の微風が調度に戯れている音だと思ったのである。 それが人の声だと気付いたのは、春の微風がヒョウガの名を囁いたからだった。 「いや……そんなこと……ヒョウガ、僕、恥ずかしい……」 「? なんだ……?」 セイヤが目をこすりながら寝台の上に身を起こす。 「あ……あ、どうしてこんな……僕、あっ……ああ……!」 音は、セイヤの部屋の隣りにあるヒョウガの部屋から洩れ聞こえてくるものだった。 「そ……そんなの無理……だめ、あっ……あっ……ああん……!」 その音が |