シュンを寝台に横たえることも、その衣類を取り除くことも、ヒョウガは、シュンに許されたキスをしながらしてのけた。 自分が許可を与えた行為であるだけに、シュンは、ヒョウガの振舞いを妨げることができなかったらしい。 その上、シュンの肌はやわらかく滑らかで、強い風から心を守るためというより、誰かに愛撫されるためにあるような肌だった。 シュンがヒョウガの愛撫に陶然とし始めるまでに、さほど長い時間はかからなかった。 「あっ……ああ、公爵……さま」 艶を帯びた声が、シュンの唇から洩れる。 どこに触れられてもシュンは快さを感じるようだったし、ヒョウガはシュンのすべてを その手と唇で確かめるつもりだった。 「ヒョウガでいいぞ。その方が俺も嬉しい」 言いながら、シュンの内腿を、膝から身体の中心に向かって撫であげる。 シュンはそれだけで、背をしならせ のけぞらせるほどの反応をみせた。 「ヒョウガ……あっ、やだ、どうしてそんなとこ触るの……!」 が、身体の反応に比して、言葉の反応に色気が欠けている。 身体の反応が見事なだけに、ヒョウガは シュンの言葉に調子を狂わされることになったのである。 「ヒョウガと呼んで、最初の言葉がそれか。普通は、嘘でも、ヒョウガが好きとか愛してるとか言うものだろう」 シュンの腿を持ち上げて、そこに舌を這わせる。 シュンは身悶えて、ヒョウガの肩を押しのけようとした。 「いや……いやだ、ああっ」 シュンは、どうやら、場にふさわしい嘘をつくことができない人間であるらしい。 もちろんヒョウガはシュンの願いを聞き入れるつもりはなく――逆にシュンの脚を大きく広げることをした。 「どうしていやなんだ」 「は……恥ずかしい」 「それくらい、我慢しろ」 「そんな……ああっ」 おそらくは羞恥に耐えかねて――シュンの瞳に涙がにじみ始める。 さすがに哀れになって、ヒョウガはその唇を、シュンに最初に許された場所――シュンの唇の上――に戻した。 「俺を好きなら、我慢してくれ」 ヒョウガが幼い子供をあやすようにそう言うと、一瞬 何か言いたげに唇を震わせたシュンは、だが、そのまま濡れた唇を閉じてしまった。 羞恥に耐える決意を、シュンはヒョウガのためにしてくれたらしい。 先程までとは打って変わって大人しくなったシュンに――それでも、微かに唇は震えている――、ヒョウガは少なからぬ感動を覚えたのである。 「おまえは俺が好きなのか?」 シュンの素直が嬉しくて、つい尋ねてしまう。 答えを待ちながら――つまりは待ち切れずに――ヒョウガはシュンの中に己れを沈み込ませた。 「あああああ……っ!」 痛みとも羞恥ともつかぬものに耐えるために、シュンが身体を反らし、悲鳴をあげる。 しがみつくようにヒョウガの背に押し当てられたシュンの指は、まもなく大きく身体を動かし始めたヒョウガ当人によって振りほどかれてしまった。 「俺が好きか」 こんな時、こんな哀れな様子をしている者に そんなことを聞き、答えを得ようとする自分を思い遣りがなく我儘だと思ったが、ヒョウガは尋ねずにはいられなかった。 今なら シュンは本当のことしか言えないだろう――という、馬鹿げた期待のせいで。 ヒョウガが身体をシュンの奥に進め、そして退くたびに、喘ぎとも悲鳴ともつかないシュンの声は断片的なものになり、そして おそらくシュンは正直になっていった。 「好き……どうして……ああ、どうしてなの、ヒョウガが好き……ああ……! あああっ!」 「シュン」 この正直で可愛い生き物を手許に置くためになら、シュンに愛されるためになら、自分は本当にすべてを投げ打つことができるだろう――。 そう確信して、ヒョウガは、それまで耐え続けていたものをシュンの中に吐き出した。 |