「やはり並の女では駄目か」
どこからか、あの悪魔の声が聞こえてくる。
私を侮るような、蔑むような声。
私はカチンときた。

違うわよ。
私が並の女だから駄目だったんじゃない。
私が瞬でなかったから駄目だったのよ。
そんなこともわからないから、あなたはこんな欠陥だらけの計画を思いつけたのよ。
それがわからないかぎり、あなたの企みは永遠に成就しないに決まってる。
私の持ってるブランド物の洋服を全部賭けてもいいわ。
あなたの計画は必ず失敗する。


『そうだ。俺が好きなのは瞬だ。おまえは誰だ』
うん。
私はあなたの瞬じゃない。
あなたは瞬が好きなのよね。
そして、それはきっと、瞬が綺麗な子だからじゃない。
瞬の綺麗な顔が好きなのなら、瞬の中にいるのが私でも何の問題もないはずだもの。

なんだろ。
なんでだろ。
私、今 ちょっと うきうきしてる。
氷河が好きなのは瞬の綺麗な顔じゃなくて、瞬だったってことを知って。

顔以外なら、私にも変えられる。
私の意思と努力で変えることができる。
それって、すごいことじゃない?
瞬がいる限り、氷河を手に入れることは無理でしょうけど、私、その気になれば極悪性格を直して、新しい恋人と幸せになることができるかもしれないってことだもの。
私は、あの悪魔の計画が頓挫したことを、心のどこかで喜んでいた。






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