シュンが身に着けているものを取り除いたヒョウガは、可憐な姫君と信じていた人が本当に男子だったことに改めて驚いたのだが、それは二人の交わりのどんな障害にもならなかった。
瞳や面差しや脚――ヒョウガが事前に美しいことを知っていた部分以外のすべてが、シュンは清潔で美しく――つまりは何もかもが美しく――ヒョウガはシュンの身体を愛撫することに、どんな抵抗も違和感も覚えなかった。
むしろ、歓喜と感激だけが そこにはあった。
やわらかい真珠のように白く なめらかな肌。
その真珠が、ヒョウガに触れられるたび、触れられた場所を薔薇色に染めていく。
その上、シュンの瞳や声は真珠より表情豊かで、シュンの身体の中は、物言わぬ真珠より自分の心と欲望に正直だった。

ヒョウガの愛撫の下で シュンは泣いていたが、それは 結ばれることはないと信じていた人と結ばれることを喜び流される涙で、涙の色も温かく、どこか なまめかしいものだった。
少々 情熱的にすぎるヒョウガの愛撫に耐えながら、シュンの唇がヒョウガの名を繰り返し呼ぶ。
名を呼ぶことさえできなくなり、シュンの唇から洩れるものが喘ぎ声だけになってからは、シュンの身体の奥まった部分がヒョウガを呼び続けていた。
求められるまま シュンの中に入り込み、その温もりと感触を堪能し、翻弄される。
内も外も、シュンは健気で大胆そのものだった。
大胆なのに、自分が何をしているか、自分が何をされているのかが、シュンはよくわかっていないらしい。
わかっていないから大胆になれるという側面もあるのかもしれないが、とにかくヒョウガは、シュンの中で 途轍もなく幸福な時間を過ごすことができたのである。

やがて喘ぎ声を洩らすことさえできなくなったシュンが、声にならない悲鳴をあげて、寝台の上ではなく海の中にいるように 身体を大きく のけぞらせる。
それを確かめてから、ヒョウガは、これから二人は幾度でも この時間を共有することができるのだと自身に言いきかせて、終わらせたくない時間を終わらせたのだった。


「ヒョウガ……」
やっと目を開け、口をきけるようになったシュンが、幸せそうな、それでいて不安そうな顔をして、たった今まで一つにつながっていた恋人の名を呼んでくる。
「大丈夫。すべて、丸く収めてみせる」
そう言って、ヒョウガは、シュンの細い裸の肩を抱き寄せた。






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