「一輝のためだとっ」 瞬に、恋人より大切な人がいた。 瞬に利用されたことより、それが一輝のためだったことが――怒りより嫉妬の感情が、氷河の心 より激しく乱していた。 歓迎の宴の席には戻らず そのまま自邸に帰った氷河は、自室に入るなり、扉の脇の棚に置かれていた白磁の壺を掴んで床に叩きつけたのである。 そして、歓迎の宴席に戻らず家に帰ってきてよかったと思う。 あのまま王宮にいたら、自分はF国賓客の歓迎の宴を滅茶苦茶にし、維持されなければならないE国とF国の友好関係に亀裂を入れてしまっていたかもしれない。 焼けつくような嫉妬が、氷河を苛んでいた。 |