翌朝9時が過ぎても、氷河と瞬は自室から出てこなかった。
毎日 計ったように6時に起床する瞬と、日暮れと共に床に就くことはないが、いつも日の出と共に目覚める氷河。
二人が二人共、その時刻になっても仲間たちの前に姿を現さないのは滅多にないこと――否、今日が初めてのことだった。

「やっぱ、氷河でも寝込むのかー。そりゃそうだよな。あの瞬に嫌いって言われたんだもんな」
「ん……? ああ、そうだな」
「瞬の方は、逆に、人に嫌いって言っちまったのがショックで寝込んでんのかな」
「まあ、そういうこともあるかもしれん」
仲間二人の心身を、星矢は割りと・・・深刻に案じていたのである。
全く気のない様子で 曖昧な反応しか示してこない紫龍に、星矢は少しばかり不満を覚えた。
そして、その通りの顔を作った。
口をとがらせて不人情な仲間を睨みつけた星矢に、紫龍が苦笑を返してくる。

「寝かせておけ。今日は特別だ」
「特別? どこが特別なんだ? 瞬が初めて、正直に人に“嫌い”宣言した記念の日かよ?」
「まあ、そうだな。今日から瞬の人生は、昨日までのそれとは違うものになるわけだ」
「……?」
紫龍が何を言っているのか、まるでわからない。
不満のせいで とがっていた星矢の口は、ますます そのとがり具合いを大きくすることになった。






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