「俺は、人の心が読めるんだ」
これまで誰にも打ち明けたことのなかった その事実を、俺が比較的あっさりと仲間たちに告げたのは、一般人ならともかく こいつ等なら、俺の力を知っても 俺を異端者として排斥することはないだろうという確信が 俺の中にあったからだった。
それに、こいつ等は――俺の仲間たちは――俺に読まれて困るようなことを考えたことのない奴等だ。
俺の仲間たちは、人を騙すようなことを考える人間じゃなく、人を陥れるような悪事を計画する奴等でもなかったから。
俺に事情説明を求めてきたのが 十二宮戦前の双子座の黄金聖闘士だったなら、俺は完全黙秘を決め込んでいただろう。

それでも、俺の中に、自分の力を告白することへの不安がなかったわけじゃない。
勝手に考えを読まれていたなんてことは、誰にだって気持ちのいいことじゃないだろう。
特に瞬は繊細だから――たとえ よくないことを考えたことがなくても、俺に勝手に考えを読まれていたことや、その事実を俺が瞬に秘密にしていたことに 傷付くかもしれないと――それは もちろん不安だった。
しかし、俺たちは、互いに命を預け合って戦う仲間同士。
その仲間に、俺はもう秘密を持っていたくなかったんだ。
だから――俺は、思い切って、誰にも告げたことのない その秘密を仲間たちに打ち明けた。
そうだな。
“比較的あっさり”という表現は、事実とは違っているかもしれない。
俺は、一生 誰にも知らせるまいと決めていたことを、一大決心をして、仲間たちに打ち明けたんだ。
俺の中では、命をかけた戦いを共に戦ってきた仲間たちへの信頼と絆の方が、秘密を守り通さなければならないという思いより、重く強く大切なものになっていたから。

なのに。
なのに、俺の信頼は裏切られた。
俺の告白を聞いた俺の仲間たちが最初にしたこと。
それは、俺の告白を笑うことだった。
それも、嘲笑や冷笑じゃない。大爆笑だ。
星矢と紫龍が盛大に吹き出して、そのまま げらげらと声をあげて荒い続け、瞬は そんなことを言い出した俺の顔を心配そうに見詰め――俺は、想定外の仲間たちの反応に 思い切り戸惑うことになったんだ。
瞬の心配顔はともかく、大決心の末の俺の告白を笑うとは何事だ、笑うとは。
星矢と紫龍は俺の告白を信じていないのかと疑い、俺は二人の心を読もうとした。
――んだが、星矢と紫龍の奴、頭の中でも、ただ笑っていやがった。
つまり、星矢と紫龍は、ものも考えられないくらい真剣に、一生懸命、大真面目に、ひたすら笑っていたんだ。
笑うだけ笑って気が済んだらしい星矢が、喉をぜいぜいさせて 俺に言った言葉。
それは、
「俺たちにも、おまえの考えてることが読めてるぜ」
だった。






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