手紙、ありがとう。 あなたは どうあっても氷河を庇うんですね。 とりあえず、ナターシャの絵が 氷河の悪意に満ちた説明によるものではなく、『キキ』という俺の名が 猿の鳴き声をイメージさせて、ああいう絵になったという事情だけは理解しました。 なぜ、違うと言ってくれなかったんだ! あなたが ついていながら! あの絵と、氷河とナターシャの写真を教皇に見せました。 教皇が教皇の椅子から ずり落ちるのを、俺は初めて見た。 笑顔全開の少女と、能面そのものの氷河。 やはり、あの写真は、誰が見ても 異様なものだったんだ。 あれが氷河の笑顔だと、あなたは あくまで言い張るのか? 何が『微笑ましいでしょう?』だ! あの写真を見て、ほのぼのできる人間なんて、あなたくらいのものだ。 ああ、もう一人、シュラがいたんだった。 氷河とナターシャを見て、『違和感がない』と評したのはシュラだったそうですね。 あなたは、その言葉を 俺への手紙に流用しただけだと。 もう一度言うが、違和感ありまくりだ! シュラは 氷河と同類だから、そう思うだけなんだ。 無表情振りでは、シュラも氷河と大差ない男だから。 ともかく、あなたが送ってくれた氷河とナターシャのツーショット写真には、カノンを教皇の椅子から ずり落ちさせるだけの力があったということだけは、憶えていてください。 カノンは、『あの氷河が子育てだと !? 』と絶句していた。 『俺を窒息死させる気か』と、素の彼に戻って、俺を叱りつけてきた。 どうして俺が叱られなければならないんだ! 氷河のせいで! あの不気味な写真は さておき、『ききのえ』はカノンに受けていました。 受けすぎるほど受けていた。 笑いをこらえようとして、涙さえ浮かべ、だが こらえきれなかった。 泣く子も黙る聖域の教皇に涙を流させ 大爆笑させるナターシャの画才には、心から敬服する(一応言っておくが、これは皮肉です)。 あなたが、常識と 冷静かつ客観的な判断力を取り戻すことを期待しています。 聖域にて
貴鬼
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