その事実を確かめる勇気を養うのに、私は2日の時間を要した。
私に残された時間は、あと2日。
私が その勇気を奮い起こすことができたのは、12日間のトライアルに失敗して 私が消滅するだけでは、氷河さんに申し訳ないと思う気持ちのせいだった。
罪を贖わず、ただ消滅するという罰を受けるだけでは、私が私を許せない。

「星矢さん。私は記憶を失う前に、氷河さんの大事な人――たとえば恋人を死なせるようなことをしたのではありませんか」
もちろん、それは瞬の本意ではなく、私のせいで。
地獄に墜ちることも許されないほどの罪を犯したのは、瞬ではなく、この私なのだ。

「それは……」
星矢さんが私に、即座に『違う』という答えを返してこないところを見ると、私の推察は当たっていたのだろう。
「そういうわけじゃないんだけどさ……」
星矢さんが言葉を淀ませる様を見て、私は確信した。
“そういうわけ”なのだ――と。

だから 私(瞬の姿をした私)を、氷河さんは いつも あんな目で見詰めている――睨んでいる。
私は その記憶を失っているから、氷河さんは 私に 報復もできない。
報復どころか、罪を犯した私を責めることすらできない。
だが――記憶がないということは、免罪符になるだろうか。
なっていいはずがない。
現に、氷河さんは私のせいで苦しんでいるのだ。
そして、氷河さんの苦しみが 私をも苦しめる。
罪を贖えないことは、私にとっても苦しみでしかなかった。


自分の罪を確信した私は、氷河さんに代わって、私に罰を与えることを決意した。
氷河さんを苦しめることに、私は耐えられない。
私は、地獄に墜ちることも許されないほどの大罪を犯したのだ。
私は、氷河さんを悲しませたのだ。
あんなに綺麗な目をした人を。

人間に犯すことのできる罪で、これ以上に重い罪があるだろうか。
もちろん、ない。
と、いかなる逡巡もなく、私は思った。






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