「ナターシャは、パパとマーマがいるから、お友だちがいなくても平気ナノ。いたら嬉しいケド、いなくても全然平気ナノ。でも、カズヒサくんが一人でいるのは悲しい。カズヒサくんが寂しそうで、かわいそうナノ」
大統領とでも 総理大臣とでも 王様とでも 女王様とでも お話のできるナターシャが、一人ぽっちのカズヒサくんのことを相談した相手は女神様だった。

「ナターシャちゃんは、強くて優しい子ね。元凶はカズヒサくんのママかしら。彼女をどうにかすれば、問題は解決しそうね。私がナターシャちゃんのために一肌脱いであげるわ」
沙織がナターシャの悩みを聞き、その解決に力を貸すことを約束したのは、彼女が、“お祖父様がいれば、友だちはいなくても平気”だった 幼い頃の自分の姿を、ナターシャの上に重ねたからだったかもしれない。
それでも、星矢たちの友情を羨ましく思うことはあった。

肉親の情、友情、恋情、そして博愛。
すべての愛を手にする可能性は、多くの人間にあるのに、それら すべての愛を我が物にできる人間は極めて少ない――女神アテナですら。女神アテナだから。
せめてナターシャのその可能性は守ってやりたい。
沙織は そう考えたのかもしれなかった。






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