だから俺が翌朝、酔いつぶれたごろつきのように公道に転がっている氷河のところに足を運んだのは、自分自身の身体を気遣ったからではなかった。ただ、あんなでかい荷物が道端に転がっているのは他人迷惑と思ってのことだった。

 瞬と氷河が通った小学校の門に寄りかかり、まだ冷たい初春の風が吹く中で、氷河は眠りこけていた。

 それがかつての俺と全く同じだったから、俺は余計に腹が立ったんだ。父親に瞬を奪われたと思い、瞬に裏切られたと信じ込み、自分ひとりが傷付いたつもりになって、こんなところで夜明かししてみせる、その子供じみた甘えが許せなかった。その実、自分が瞬を傷付けているのかもしれないなんてことは考えもしないガキなんだ、こいつは。

 氷河はこれから、かつて俺が辿った道をなぞるように生きていくのかもしれない。どこかでふと立ち止まり、瞬の心を思いやる機会を得ない限り。

 俺に腕を掴みあげられた氷河が、反抗的な目を俺に向けてくる。それには構わずに、俺は氷河を車の後部座席に押し込んだ。

 氷河があの時の俺とそっくりだから、いや、俺自身だからこそ、その為体が我慢ならなかった。






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