気が付くと瞬は、自室のベッドの上に横たわっていた。 自分が氷河の部屋に侵入しようとしたことや、氷河が暴力でそれを阻んだことは、もちろん夢なのだと自身に言いきかせ、瞬は めげずに たくましく再び氷河の部屋に向かったのである。 夢が本当に夢だったのかどうかを確かめるために、氷河の部屋のベランダの有様を確認することは、到底瞬にはできなかったし、瞬はそんなことをしようとも思わなかった。 瞬にできることはただ一つ。 正攻法で、これまで通り、正面から氷河に懇願することだけだった。 「氷河! お願い、ここを開けて! 僕に顔を見せて!」 瞬は声を限りに叫んだのだが、それで瞬が得ることができたのは、彼が今 最も聞きたくない氷河の謝罪の言葉。 「瞬、大丈夫だったか? すまん。突然来るから、他にいい方法が思いつかなかったんだ……」 「……」 ドア越しに氷河に謝罪されて、瞬は、認めたくないことを認めざるを得なくなってしまったのである。 瞬は唇を噛みしめて、顔を伏せた。 平生の氷河は、そんな余計なことを口にすることは決してしない男だった。 瞬のために自分の非を認めずにいることや、瞬のために嘘をつき通すことを、平生の彼は極めて容易に、そして自然にやってのけていた。 氷河のこんな失言に出会うのは、瞬はこれが初めてだったのである。 |