そして、第8の宮、天蠍宮。 守護する黄金聖闘士は、スコーピオンのミロである。 彼は、人好きする程度に意地の悪い態度で、氷河を自分の宮に迎え入れた。 「おお、氷河、久し振りだな。俺は美味いものは食い慣れてるぞ、どう出るつもりだ」 「…………」 氷河は、デスマスクとは全く違った意味で、この男が嫌いだった。 なにしろ、ミロは、どーゆー訳か、氷河×瞬同人界では瞬に気があると思われている男なのでだ。 ネット上とはいえ、ここも氷河×瞬同人界に変わりはない。 しかし、だからこそ、氷河にはこの男との勝負に勝機が見えていた。 氷河は、聖域の麓の100円ショップで(あるのか、んなもん)買ってきた、柄にチューリップ模様のついたスプーンを、勿体ぶって取り出したのである。(いつのまにそんなものを買ってきたんだ? などと考えるのは良い読者ではありません) そして、手で引き裂いた(故に手がかかっている)グレープフルーツを皿に乗せ、そのスプーンと共に、ミロの目の前に差し出した。 「これは瞬愛用のスプーンだ。貴様のためにわざわざ日本から持ってきた。これで、このグレープフルーツを食ってみろ、美味いに決まっている」 「アンドロメダ愛用のスプーン!」 氷河×瞬同人界に、アナログもオンラインもない。 氷河×瞬同人界のミロは、氷河×瞬同人界のミロだった。 ミロが、チューリップの柄のスプーンを味わって、満足げに「美味い」と断言したのは言うまでもないことである。 |