翌日、氷河が再度瞬の研究所に出向くと、研究所の対応が昨日とは少しばかり違っていた。氷河には所内への立ち入り許可が降り、彼は応接室へと案内されたのである。

氷河がそのソファに腰を下ろすか下ろさないかのうちに、瞬が応接室に飛び込んできた。白衣を身に着けた瞬は、そして、泣きそうな顔で氷河に謝罪を始めたのである。


「すみません、すみません。昨日はご迷惑をおかけしました。お酒があんなにすごいものだなんて、僕知らなくて、少しくらいなら飲んでも平気だろうと思って、それで……!」

米つきバッタよろしく幾度も頭を下げる瞬に、氷河は面食らった。
昨日から何度も脳裏を横切った思い――この子が本当にグラードの最重要機密を握っているのか? という思い――が、またしても氷河の胸中で頭をもたげてくる。

「いや、飲んだことがないと聞いていながら、酒を勧めた俺が悪かったんだ。俺としては、昨日できなかった取材をもう一度させてもらえれば不都合はない」

「も…もちろんです!」
まるで、してはいけない悪戯を大目に見てもらった子供のような安堵の表情を浮かべ、瞬は大きく頷いた。





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