氷河が動くより先に、部屋のドアは開けられていた。 こじ開けたのでも何でもなく、瞬は――正しくは、瞬の連れは――最初からこの部屋のスペアキーを持っていたものらしい。 瞬は、相変わらず子供のように澄んだ瞳をしていた。 そして、背後に、いかにもそれとわかる屈強な男を二人従えていた。 「瞬……どういうことだ、逃げなくていい…?」 「ええ。あなたは、グラードの組織に守られてますから」 瞬は、そう言って、氷河に秘密を打ち明けたあの時と同じようににっこりと、諜報員失格の男に微笑みかけてきた。 ただ一人信じていた相手に裏切られるという最悪の事態には陥っていないらしいという判断が、氷河の混乱を少しばかり鎮めてくれた。 |