鏡迷宮

〜元滋賀県民さんに捧ぐ〜






瞬の目が閉じられ、その身が土に還っても、慟哭さえしない氷河を、星矢たちは訝っていた。
瞬の命が消えた時、星矢たちの胸に最初に去来したものは、死んでいった瞬への哀悼ではなく、生きて残された氷河に対する憂慮だったというのに。

瞬の死は氷河の死をも意味するに違いないと、星矢たちは思っていたのだ。


しかし。

瞬の死を目の当たりにしても、その墓標の前でも、氷河は無言ではあったが冷静で、取り乱すこともなく、涙の一粒も見せなければ、呻き声の一つも洩らさなかった。

衝撃の大きさに自分を失っているのかと思って声をかけると、まともな答えが返ってくる。

星矢も一輝も紫龍も沙織も、氷河のその平静さに、逆に平穏ならざるものを感じていた。





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