氷河は見詰めていた。
その鏡を。
何時間も。
“時間”という観念をすら忘れて。


彼は待っていたのである。
決して忘れられない瞬の言葉。
瞬の約束――が叶えられる時を。


氷河は、それが叶うはずのない夢物語でも、瞬の言葉なら信じることができた。
否、むしろ、氷河は信じさせられたのだ。
瞬によって。


瞬はそういう人間だった。
瞬は、氷河にとって、何かを――すべてを――信じさせてくれる存在だった。
夢も、愛情も、幸福も、献身も、優しさも、強さも、無限も、氷河は瞬によってその存在を知り、そして、信じさせられたのだ。





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