「…………」 荒ぶる息を鎮めながら、氷河はほとんど自己嫌悪に陥ってしまっていた。 自分という人間が備えている、実に、何というか、情けないほど単純明快な男の生理機能というものに――。 確かに、瞬の言う通り、ほとんど何の支障もなく、それはできてしまったのだ。 しかも、かなり刺激的な快感を伴って。 「よ…要するに、上か下かの問題なんだから! いつもと同じことを、180度回転した状態ですればいいだけのことなんだから…っ!」 自分の大胆さが恥ずかしいのか、こんなことをさせた氷河に腹を立てているのか、あるいは生まれて初めての○○位(書けません〜;;)に昂奮しすぎたのか、瞬の頬は紅潮し、瞳もまた僅かにに紅く染まって潤んでいる。 「…………」 氷河は――氷河は、そーゆーやり方が決して嫌な訳ではなかった。月に1度くらいなら、それも楽しめるとは思う。 しかし。 しかしである。 氷河は、他のことなら、瞬のどんな我儘も――誰にでも愛想がいいことも、万人に対して善い人であろうとひたすら努力することも――叶えてやりたかったし、我慢することもできた。だが、だからこそ、この件に関しては、この件に関してだけは、自分が主導権を握っていたかったのである(月に1回くらいなら、その主導権を瞬に預けるのも楽しそうだとは思ったが)。 瞬は“本気”らしかった。 昵懇の間柄の仲間をシベリアに行かせないために、本気でこの部屋に監禁するつもりのようだった。 それは、氷河が噂で聞いていた“瞬の本気”とは、著しく趣を異にする“本気”ではあったが。 「こんなことをしても意味がないぞ。どうせすぐに星矢や紫龍が気付いて――」 「僕の無謀をやめろって説教でもしてくれるって? その心配は無用だよ。星矢たちには、氷河は朝早く僕たちに挨拶もなしにシベリアに行っちゃったって説明しとくから。今回はいつ帰ってくるかもわからないみたいだった…って」 「む……」 こーゆー時は、普段の行ないがものを言う。 いざという時連絡をとりやすいように出先の場所を伝えておいたり、帰りが遅くなるからとこまめに連絡を入れたりするような気配りを持ち合わせていない人間は、誘拐されようが監禁されていようが、家人から心配はしてもらえないのだ。 (まして、俺が瞬の部屋で瞬に監禁されているなんて、誰も考えもしないだろうしな……) それでも、氷河は、小宇宙を燃やして星矢たちをこの場に呼ぶ気にはならなかった。 |