さて、そんなきな臭い密談が江戸城表御殿で繰り広げられていた頃。

噂の色小姓・野原瞬之介(モーモーさん、ご存じでしょうか? 日本で最も有名な幼稚園児の名前のもじりなのですが;;)と八代将軍徳川氷河(名前の不自然さには目をつぶってください〜;;)は、江戸城中奥の一室に二人きりで引きこもり、妖しげな行為に耽っていた――耽っていることになっていた。

が、事実は少々――どころか、かーなーりー、違っていたのである。
その頃二人は、江戸城内にはいなかった。
二人はその頃、某浅草寺の境内で、将軍家お庭番から、某々悪代官の行状についての報告を受けていたのである。

そもそも、瞬之介(面倒なので、以下、『瞬』とさせていただきます)と氷河は、絵島や脇坂の思っているような関係を持ったことは一度もなかった。

脇坂が偶然目にして思わず妖しい気分になってしまった朝方の瞬。
それも実は、将軍との××が過ぎて疲労していたわけでも何でもなかったのである。
瞬は、全く別のことで疲労困憊していたのだ。





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