が、それで収まりがつかないのが、大奥の年寄衆である。

あたら若い花の時期を大奥に捧げ、その代償として手に入れた贅沢な生活、華麗な衣装、表にも勝る厳然たる権力――が、たまたま迎えた将軍が衆道好みの目立ちたがり屋だったために失われようとしているのである。
とんでもない話だった。


ともかく、将軍に大奥に来てもらわねばならない。
そのためには、将軍に大奥を不要と思わせている瞬の存在が邪魔である。
邪魔なものは消してしまえばいい。
――という、実に明快な三段論法によって、瞬暗殺の計画は実行に移された。
大奥年寄り衆にとって幸いなことに、瞬は、氷河の暴れん坊将軍ごっこに付き合って(付き合わされて)城外に出ていることが多いため、城外で“事故”を装い、瞬の命を奪うには好都合である。


そういうわけで、複数の殺し屋が次々に瞬に差し向けられたのだが、それらはことごとく返り討ちに合ってしまった。
なにしろ、嬉々として暴れん坊将軍ごっこをしている氷河は新陰流免許皆伝だったし、瞬も齢15にして自源流を極めていたのだ。
度重なる瞬暗殺失敗の報に、大奥お年寄り衆の苛立ちは頂点に達していた。





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