たとえ、大風が吹いていても、メイドロボたちの勤労意欲は萎えることがありません。 「僕たちは、大風なんかに負けないぞ!」 「僕たちの出勤を氷河様と瞬様が待ってるんだ!」 「そうだ、お二人が待ってるんだ!」 「絶対に負けないぞ!」 「うん、負けないぞ!」 ――と、健気な決意をして、しっかりと手をつないだ15人がメイドロボハウスのドアを開けた途端。 びゅわわわわ〜ん !!!! と、ものすごい風がメイドロボたちに襲いかかりました。 「わあああぁぁぁぁっっっ !!!! 」
メイドロボたちの決死の覚悟も風前のともしび。 しかし、メイドロボたちの勤労意欲は、大風ごときに吹き飛ばされてしまうようなヤワなものではありません。 列の端にいた1号が、かろうじてドアノブにつかまり、幸いにもメイドロボたちは家の中に押し戻されて壁に叩きつけられる大惨事を免れることができたのです。 メイドロボたちの命を支えているのは、ドアノブを掴んでいる1号の小さな手ひとつ。 子供の日の鯉のぼりの吹き流し状態で、15人はしばらく風に弄ばれていました。 しかし、1号の手ひとつで15人の仲間全員を支え続けるのには限界があります。 1号の手は、もう限界を超えかけていました。 「1号! もういいから、その手を放して!」 「そうだよ、1号、手を放して!」 「きっと1号だけなら、助かるよ。このままだと、助かるはずの1号まで風に吹き飛ばされてしまう!」 「お願い、1号! 1号だけでも助かって、そして、僕たちがどんなに氷河様と瞬様のことを大好きだったかを、お二人に伝えて!」 「1号まで風に吹き飛ばされてしまったら、僕たちが何のために飛ばされちゃったのかを、ご主人様たちに伝えてくれるメイドロボがいなくなっちゃうよ!」 仲間たちの必死の懇願に、しかし、1号は頷きませんでした。 「氷河様と瞬様は、僕が伝えなくても、僕たちの気持ちはきっとわかっててくださるよ。僕だけ助かるなんて、そんなことできない。僕たちはいつも一緒だった。僕はひとりぽっちだとダンスを踊ることもできない。僕たちは……だって、僕たちは仲間じゃないかっっ !! 」 「1号〜っっ !!!! 」× 14 1号の叫びに、残りの14人は泣いていました。 いいえ、1号も泣いていました。 けれど、ここでメイドロボ全員が吹き飛ばされてしまうわけにはいかないことを、メイドロボたちは知っていたのです。 「1号、僕たち、決して1号の友情を忘れないよ……」 そう言って、2号が1号の手を振りほどこうとした時。 「おまえたち。瞬が心配してるぞ」 と言って、のそりとその場に現れたのは、彼等の救世主・氷河その人でした。 吹き流し状態の15人を一まとめにして抱き上げると、氷河は、 「おまえたちにも持ち運べるような携帯電話があるといいんだがな」 と溜め息混じりに呟きました。 かくして今日も無事に出勤できた15人のメイドロボたち。 もちろん、メイドロボたちはその日も氷瞬家のテーブルで、『ご主人様、助けてくれてありがとう』ダンスを踊ったのでした。 |