「瞬様と同じくらいの大きさの人だったの」
「でも、すごく恐い目をしてたの」
「『こんにちは』も言わないで、9号を掴みあげたの」
「『さようなら』も言わないで、どこかに消えちゃったの」
「あーん、あーん、あーん、恐かったよぉー !! 」
「あーん、あーん、あーん、9号がさらわれちゃったよぉー !! 」


メイドロボたちの証言は、まるで手掛かりになりません。

瞬は、わんわん泣いているメイドロボたちを抱きしめながら、自分も泣きそうな顔。

しかし、幸いなことに、犯人の手掛かりは皆無というわけではありませんでした。
氷河は、メイドロボたちと暮らすようになってから、メイドロボたちが家の中で遭難事故に遭ったりしないようにと、すべての部屋に監視カメラをつけておいたのです。
そのカメラには、誘拐犯の顔がばっちり映っていました。

問題は、氷河にその顔に見覚えがないことだったのです。
その誘拐犯は、高性能メイドロボの秘密を探りに来るような、グラード・メイド・ロボ・コーポレーションのライバル社の工作員とも思えませんでした。

けれど、瞬が、その顔を憶えていたのです。

「あ、この人は、きゃわさんっていう人だよ。時々うちの方までお散歩に来ることがあって、僕が『こんにちは』って声をかけると、いつも大慌てで逃げてっちゃうんだ」
「なるほど。変質者だな」

あっさりと、きゃわを変質者と見破った氷河は、早速9号を取り戻すために村外れのきゃわの家へと向かったのでした。






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