氷河が、小人たちの迷子札を手に仕事部屋に引っ込みますと、ここまで散々引っ張ってきましたが、ついに! ついに、その時がやってきました。
やっと、氷の国星の小人たちが手を洗える時がやってきたのです。

「全員、今度こそ、本当に前―進めっ!」
ざっざっざっざっざっざっざっざっ★

氷の国星の小人たちは、前進開始。
きっちり3列縦隊の氷の国星の小人たちの隊列を取り囲むようにして、メイドロボたちは、ばらばらに洗面所に移動です。


そんな氷の国星の小人たちを眺めながら、メイドロボの一人がぽそっと呟きました。
「ねえ、氷の国星の小人さんたちって、すごく統制のとれた小人さんたちだよね」
「うん……」
「でも、僕たち、あんなふうにしたことないよね」
「うん……」
「僕たち、いつも、ばらばらだよね」
「うん……」

とっても規律正しい氷の国星の小人たちを見ているうちに、メイドロボたちは、自分たちの統制のなさに不安を感じ始めていたのです。

「僕たち、こんなことでいいのかしら」
「…………」× 15

統制のとれた氷の国星の小人たちの迷いのなさを見ていると、メイドロボたちは、氷の国星の小人たちが正しくて、自分たちは間違っているような──そんな気持ちになっていくのを抑えることができませんでした。

「氷河様と瞬様は、僕たちより、氷の国星の小人さんたちの方がいいなーって思ったりなさらないかしら……」
「え…まさか、そんなこと……」

『そんなこと』と言いつつ、メイドロボたちは、それが何よりも不安だったのです。

メイドロボたちは、氷河と瞬の幸せのためだけに働いていました。
そのためだけに生きていました。

氷河と瞬に、『もういらない』と言われるようなことがあったら──その時はメイドロボたちの死ぬ時なのです……。







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