氷の国星の小人たちの食料問題に頭を悩ませている瞬に、ふいに、メイドロボたちが心配そうな顔をして、おずおずと尋ねました。

「あの……瞬様……」
「なぁに、メイドロボちゃんたち」

「あの……あの……瞬様は、僕たちも氷の国星の小人さんたちみたいに、統制がとれてた方が嬉しいですか?」
「え……?」
「僕たち、いつもばらばらで、氷の国星の小人さんたちみたいに礼儀正しくないから……。瞬様は、そういうのはお嫌いですか」

「メイドロボちゃんたち……?」

瞬の目の前でしょんぼりしているメイドロボたちの後ろでは、規律も統制も忘れて野生に返り(?)、ピザと格闘している氷の国星の小人たちの姿があります。

瞬は、すっかり自信喪失してしまっているらしいメイドロボたちに、優しく微笑いながら言いました。
「あのね、メイドロボちゃんたちは、そんなこと気にしなくていいの。メイドロボちゃんたちは、ばらばらなんかじゃないよ。いざって言う時にはいつだって、助け合って支え合ってるじゃない」

「でも、僕たち、あんまり礼儀正しくないし」
「だから、氷の国星の小人さんたちと僕たちを比べて、氷河様と瞬様もあきれてらっしゃるんじゃないかと思って……」

「そんなことないよ」
「ほんとですか……?」

「ほんとだよ。――だって……。ねえ、氷の国星の小人さんたちが、あんなにきっちりしてるのって、どうしてだと思う?」

突然、そんなことを訊かれても、メイドロボたちにはわかりませんでした。
メイドロボたちは、あんなふうに隊列を組んだり、おんなじ歩幅で歩いてみたいなんて考えたこともありませんでしたからね。

「どうして……って……誰かに誉められたいからかしら?」
「誉められたら、嬉しいからかなぁ?」

「そうだね。でも、氷の国星の小人さんたちは、どうして誉められたら嬉しいって感じるんだろう?」
「え? だって、誉められたら嬉しいのは、誰でもそうなんじゃ……」

隊列や歩幅を揃える楽しさはわかりませんでしたが、誉められたら嬉しい気持ちになることは、メイドロボたちだって知っていました。
氷河や瞬に誉められた時、メイドロボたちはいつも、誉められた自分たちが誇らしく思えるほど嬉して幸せな気分になれましたから。

「うん、そうかもしれないね。でも、僕が思うに、氷の国星の氷河さんは、氷の国星の小人さんたちを誉める時、いつもとっても嬉しそうにするんだと思うんだ。氷の国星の氷河さんが嬉しそうにしてるから、氷の国星の小人さんたちも、嬉しくなるんだと思うの。メイドロボちゃんたちは、さっき、小人さんたちを誉めた時、どんな気持ちだった?」

「それは……すごいなーって」
「立派だなーって」
「感心しちゃって、感動しちゃった」

「悪い気持ちじゃなかったでしょ」
「はい」
「うん。そんなふうにね、誰かを心から誉める時には、誉めてる人も幸せなの。小人さんたちは、そのことを知ってるんじゃないかなぁ。氷の国星の小人さんたちと氷の国星の氷河さんは、きっと、誉めたり誉められたりすることで、お互いを幸せにし合ってるんだよ。」

「幸せにし合ってる……?」
「うん。きっとそうだよ」

それでもまだどこか心許なげなメイドロボたちに、瞬はもう一度にっこりと笑いかけました。

「ねえ、メイドロボちゃんたちが、僕たちの家にいるのはどうして?」

「それは、もちろん、氷河様と瞬様に幸せになっていただくためです!」
「そのためにだったら、僕たち、何だってします!」
「氷河様と瞬様の幸せが、僕たちの幸せですから!」

「ありがとう。でも、ほら、メイドロボちゃんたちも、氷の国星の小人さんたちも、やり方が違うだけで、気持ちはおんなじなんだと思うよ。大好きな人にね、喜んでほしいの。だから、いい子でいようとするの。だから、頑張れるんだよ」

「瞬様……」× 15

「メイドロボちゃんたちは、メイドロボちゃんたちのやり方でいいじゃない。僕と氷河だって、メイドロボちゃんたちに幸せになってもらうために何かするのに、僕と氷河なりのやり方でしかできないもの。僕と氷河には3列縦隊になるのは無理だけど、でも、僕たちはいつだって、メイドロボちゃんたちに幸せでいてほしいって願ってるんだよ」

「瞬様……」× 15







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