この時点で、二人はまだ知りませんでした。

氷の国星の小人たちの迷子札が、この広大無辺な大宇宙の中で、氷の国星の小人たちと氷の国星の氷河を繋ぐ唯一の糸だったということを。

氷の国星の氷河は、旅立つ小人たちの身を案じ、エンゲージリングと迷子札の間に、ある仕掛けを施していました。
エンゲージリングと迷子札は互いにリンクしていて、両者が一定時間、1メートル以上離れた場合には、直ちに氷の国星の氷河の元へ、緊急連絡信号が届くことになっていたのです。


それでなくても、彼の小人たちと離れているせいで、不安や寂しさや苛立ち(や欲求不満)のせいで気が立っているはずの氷の国星の氷河が、エマージェンシーコール受信後にとる行動は、想像するに難くありません。
というより、何をしでかすかわかりません。


平和な地球に危険が迫っていることを、けれど、今は誰も知らないのでした。







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