氷の国星の氷河は、衣装部屋のずらり並んだ高級ブランド・オートクチュールの中から、今日の午前の一着を選んで身にまとうと、広いリビングの超高級肘掛け椅子に腰をおろしました。

手許のスイッチを押すと、部屋の壁に幅10メートルほどのワイドスクリーンが出現し、そこにスパイ衛星から送られてくる映像が映し出されます。

「ふん。チンケな星だな」

質量・大きさ共、地球と氷の国星はほぼ同じなのですが、氷の国星の氷河は、それがにっくき地球の氷河のいる星だと思うと、どうしても地球を貶めたくなるのでした。

スパイ衛星は、まず地球の全景を映しだし、それから、地球各地の様々な風景と人々の姿を次々にスクリーンに映し始めました。
最高級のコニャックの入ったグラスを揺らしながら、氷の国星の氷河は、つまらなそうに、その映像を眺めていました。

氷の国星の氷河が、その映像を眺め始めてから、5分も経った頃だったでしょうか。
「む?」

氷の国星の氷河は、スパイ衛星から送られてくる映像の中に、素晴らしいものを発見したのです

それは、氷の国星には存在しない――まるで奇跡のような存在でした。







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