たれたれ氷河さんは、夜なべ仕事をしていました。 無論、彼の愛するたれたれ瞬ちゃんのために、です。 他に理由なんかありません。 氷の国の住人の小人の15号が、仲間たちと共に氷の国に帰っていったその日。 たれたれ氷河さんは、すっかり15号に情の移ってしまっていたたれたれ瞬ちゃんに大泣きに泣かれて、困り果てることになりました。 いくらたれたれ瞬ちゃんに『15号ちゃんに会いたい』と泣かれても、こればかりは叶えてやれる望みではありません。 15号は自分の意志で、自分の仲間たちと自分の氷河の許に帰っていったのです。 それを、 『俺の瞬が寂しがってるから、15号を貸してくれ』 と、図書館の本のように借りてくるわけにはいきませんし、そんなことをしたら、今度は15号の仲間たちが寂しい思いをすることになるでしょう。 たれたれ瞬ちゃんの幸せのためにだったら、自分の命すらも惜しくないたれたれ氷河さんではありましたが、そのために、15号の仲間のあの可愛い小人たちを泣かせるわけにはいかなかったのです。 まして、よその家の瞬を貸し出してもらうなんて、それこそ、氷河の道に反することですもの。 たれたれ氷河さんは、泣いているたれたれ瞬ちゃんの髪を撫で、たれたれ瞬ちゃんの好きなおやつをテーブルにずらりと並べたり、おでかけに誘ったりして気を紛らわせ、お家に帰ってきたら帰ってきたで、得意のむにゃむにゃで、たれたれ瞬ちゃんを念入りに慰めてあげました。 それで、一時は15号のことを忘れるたれたれ瞬ちゃんだったのですけれど、たれたれ氷河さんの慰めの効果はその時限りのものでしかありませんでした。 朝になると、たれたれ瞬ちゃんは、やっぱり、 「15号ちゃんに会いたいよぉ……!」 と、泣き出してしまうのです。 そういうわけで、たれたれ氷河さんは夜なべ仕事をしているのでした。 たれたれ氷河さんは、大切なたれたれ瞬ちゃんの心を慰めるために、15号マスコットをちーくちくと縫っていたのです。 大きな手に縫い針を持って、フェルトの生地をちょきちょき切って、たれたれ氷河さんは、真剣そのものの面持ちで、15号1/1スケールのマスコット作成にいそしんだのでした。 |