さて、氷の国の氷河力作の『あったかいところキッチン基地防衛隊の歌』ですが、小人たちの歌の評判は惨憺たるものでした。


「僕、あの歌やだー。ちっとも勇ましくないんだもの」
「僕もやだ〜。僕、どうせなら宇宙戦艦ヤマトみたいなのがいいー」
「あ、いいよね、ヤマト。キッチン基地ぼ〜え〜た〜い♪」

「トトロもいいよ! 僕らのキッチン、キッチン キッチン、キッチン♪」
「わぁ、ぽっぷ〜v」
「でしょ、でしょv」

「なのに、あの歌……」

思い出すだけで、ついついどよ〜んとなってしまう、氷河の力作。
明るく楽しいスペイン民謡を、ここまでどよ〜ん★気分にさせてしまえる氷の国の氷河の作詞の才能も相当のものです。


「ねぇ、そもそも『ばつばつ』って何なの? 誰か知ってる?」
「え? 敵の怪獣の名前でしょ?」
「違うよぉ。『ばつばつは楽しい』って言ってるもん。きっとダンスの名前だよー」
「ケーキの名前v」
「テレビゲームのタイトルだよぉ」

しかも、その才能は、他人にわかってもらえない類のもののようでした。
実は、小人たちは、××の意味も知らずに、この歌を歌って(歌わされて)いたのです。

小人たちは、謎の『××』について激しい討論を戦わせましたが、納得できる結論はなかなか出てきませんでした。

『ばつばつ』について討論すること、約5分。
小人たちの意見も出尽くした頃、それまで一言も口をきかずにいた、えっち好き担当の15号が、突然仲間たちを怒鳴りつけました。

「みんなのばかっ !! 」

15号は、小さな拳を怒りのためにぷるぷると震わせています。

「ど…どーしたの、15号?」
1号〜14号は、15号の剣幕にびっくり★。


「みんなはそんなことも知らないで、今まであの歌を歌ってたのっ !? それじゃ、氷河がかわいそうだよっ !! 」
「じゅ……15号……。じゃあ、15号はばつばつが何なのか知ってるんだね?」
「あたりまえだよっ!」

自信満々できっぱり断言する15号に、小人たちは色めき立ちました。
「お…教えてっ! 教えて、15号!」

「うん。じゃあ、みんなのため、氷河のために教えてあげるね」
「うんうん」× 14

「歌詞をよく聞けばすぐわかるんだよ。楽しくて、恐いと思われがちだけど実は恐くなくて、気持ちよくって、大人にだけ許されたたしなみ、でしょ」
「うんうんうん」× 14

「それはね……」

小人たちは、続く15号の答えを待って、ごくりと息を飲みました。
そんな仲間たちをぐるりと見回してから、15号は重々しい口調で言ったのです。

「酒とタバコだよ」

「おおおおおおおおっっ !!!! 」× 14

大人のたしなみと言われて、これほど納得できる答えはありません。
小人たちは、15号の答えに大きく頷きました。