たれたれ氷河さんの有意義極まりない特別講義と、小人たちのウイークポイント談義から得られた膨大な情報。 これだけのデータがあれば、よほどのトンマでない限り、目的を達することができるはずです。 逆に言えば、これだけのデータを得て目的を達することができない男は、よほどのトンマだということになります。 氷の国の氷河は……いえ、何でもありません。 ともあれ、そんなこんなで、ついにやってきた、氷の国への帰国の日。 「小人さんたち、また、遊びに来てね! きっとだよ!」 「たれたれ瞬ちゃ〜ん !! 」× 15 大泣きに泣いて別れを惜しむ小人たちとたれたれ瞬ちゃんを見守る氷の国の氷河は、両手いっぱいに、甘いシロップ、クリーム類を抱えていました。 背中には、たれたれ瞬ちゃんお手製の焼き菓子で破れそうなほどぱんぱんに膨れた風呂敷包みを背負っています。 それは、たれたれ瞬ちゃんから小人たちへの嬉しいおみやげでした。 (シロップ類は、氷の国の氷河が近所のスーパーで買いあさってきたものです) 傍目にはちっともカッコ良く見えない氷の国の氷河でしたが、今、彼はひどく誇らしい気分でいました。 たれたれ氷河さんからの妖しい秘儀を伝授されただけで、氷の国の氷河は、なんだか自分が大人になったような気持ちになっていたのです。 「たれたれ氷河、色々世話になった。俺は頑張る。きっと、立派な氷瞬界の氷河になって、そのことを報告するために、また、あったかい国にやって来るぞ」 「うむ。頑張れよ」 氷河同士の堅く熱い誓いを交わし、背中の風呂敷包みに小人たちを乗せて、氷の国の氷河は何度も何度も後ろを振り返り振り返りして、思い出深いたれたれさん宅を後にしました。 「氷河ーっっ! 氷河が振り返ったら、僕たちがたれたれ瞬ちゃんたちを見れなくなるでしょーっっ !! 」 と、小人たちに怒鳴られながら――。 |