たれたれ瞬ちゃん偽ケーキ殺人事件

〜そして事件は始まった〜









氷の国の氷河は哀れです。
氷の国の氷河は不憫です。
氷の国の氷河はおばかさんです。
氷の国の氷河は数限りない欠点を有し、その身体に哀れの宿命をも宿しています。


けれど、氷の国の氷河には、それら全ての欠点を帳消しにする、素晴らしい美点がありました。

氷の国の氷河は、どんなに哀れな事態になっても、どんなに惨めなことになっても、どんなに辛く哀しく苦しい目に合っても、決して挫けなかったのです。
打ちのめされ、更に打ちのめされ、重ねて打ちのめされても、決して諦めてしまわなかったのです。

もちろん、それは、諦めてしまえない彼の“夢”が、彼の命そのものだったからでしょう。

人が何かを諦めてしまえる時、それは要するに、その程度のものだっただけなのです。
真に心から欲しているものを、人は決して諦めたりはしません。
叶わなくても諦められないのです。



氷の国の氷河は、諦めませんでした。

いいえ、諦めてしまうことができなかったのです。