氷の国の氷河は哀れです。 氷の国の氷河は不憫です。 氷の国の氷河はおばかさんです。 氷の国の氷河は数限りない欠点を有し、その身体に哀れの宿命をも宿しています。 けれど、氷の国の氷河には、それら全ての欠点を帳消しにする、素晴らしい美点がありました。 氷の国の氷河は、どんなに哀れな事態になっても、どんなに惨めなことになっても、どんなに辛く哀しく苦しい目に合っても、決して挫けなかったのです。 打ちのめされ、更に打ちのめされ、重ねて打ちのめされても、決して諦めてしまわなかったのです。 もちろん、それは、諦めてしまえない彼の“夢”が、彼の命そのものだったからでしょう。 人が何かを諦めてしまえる時、それは要するに、その程度のものだっただけなのです。 真に心から欲しているものを、人は決して諦めたりはしません。 叶わなくても諦められないのです。 氷の国の氷河は、諦めませんでした。 いいえ、諦めてしまうことができなかったのです。 |