(ああ……最期に小人たちの声が聞けるなんて、俺はなんて幸せ者なんだ……。神様、どうもありがとう……)

幻聴のように聞こえてくる、懐かしい小人たちの声。
氷の国の氷河は、それを、これまであまり自分を愛してくれなかった運命の神様の最後の思い遣りなのだと思いました。


「助けてあげようよ。なんだか、すごくみじめな雰囲気が滲み出てるよ?」
「うん、これって、なんだか、すごく懐かしい雰囲気だよね……」

運命の神様の思い遣りの幻聴は、少しずつ少しずつ氷の国の氷河に近付いてきます。
あと5メートル、3メートル、2メートル――。


そして、あと1メートルというところで、
「はっ☆」× 15

小人たちは、その得体の知れない芋虫が何なのかに気付いたのです!

「こっ……この匂いは……!」
「うん、この匂いは……」
「1週間くらいお風呂に入ってないような匂いに混じっている、この匂いは……」
「東京バナナと六花亭のバターサンドクッキーとういろうときしめんとうどんと一六タルトと温泉卵とみかんの匂いに混じっているこの匂いは……」

疑いようがありませんでした。
どんなに長い間離れていても、どんなに氷の国の氷河が薄汚れていても、小人たちが、小人たちの愛する氷の国の氷河(の匂い)を忘れるはずがなかったのです。

「氷河だ!」
「僕たちの氷河だ!」
「僕たちを捜しに来てくれたんだ!」
「おみやげを持って、僕たちを迎えに来てくれたんだっ!」

「氷河ーっ! あーん、あーん、あーん !! どーして、僕たちをこんなに待たせたのーっっ !! 」× 15

「お……おまえたち……。これは夢じゃないのか」
「氷河―っっ !! 」× 15

小人たちは、わらわらわらと、倒れている氷の国の氷河の身体によじ登り、しがみつき、ぽろぽろ大粒の涙を零して大泣きです。

運命の神様に愛されている小人たちは、風の国で楽しくおいしい毎日を過ごしていましたが、それとこれとは話が別。
運命の人が側にいてくれない幸せは、100パーセントの幸せではありませんからね。


でも、今、やっと。
小人たちの許に、完全無欠100パーセントの幸せが戻ってきたのです!






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