「ひょ〜が〜、はんどぱわーを手に入れて〜」
「はんどぱわー は幸せのちからー」
「はんどぱわー は夢と希望のちからー」
「ひょ〜が〜、はんどぱわーだよー」

奇跡の力はおろか、トランプをシャッフルすることもできない氷の国の氷河に、ハンドパワーを身につけることなどできるはずがありません。
けれど、氷の国の氷河は、必死の形相の小人たちに迫られて、
『そんな力は、本当はこの世に存在しないんだ』
だなんて、本当のことを言えるオトコでもありませんでした。

でも、そんな力がこの世に存在しないことを知っているだけに、氷の国の氷河にはどうすればいいのかがわからなかったのです。

「あ……あのな、おまえたち。は…はんどぱわ〜は、あ〜、多分、厳しい修行を長いこと続けないと身につかない力だと思うんだ」
小人たちを落胆させないように、その場しのぎの言い逃れを言うのが、氷の国の氷河には精一杯。

氷の国の氷河のその言葉を聞いた小人たちが、少しばかり――ほんのちょっとだけ――憑き物が落ちたような顔になります。

「修行?」
「厳しい修行?」
「どんな修行?」
「そんなに辛い修行?」
「しゅぎょ〜い!」

仲間の口から突然飛び出てきたしょーもないダジャレに、他の小人たちが全員、がくがくがくっ★ とずっこけてしまいます。

「もう、5号ったら、この緊迫した場面で、氷河みたいにくだらないシャレ言わないでよ!」
「ごめ〜ん」
9号に教育的指導を出された5号は、ぺろっと舌を出して、みんなに謝りました。

けれど、腰も砕ける5号のダジャレのせいで、小人たちは今度こそしっかりと冷静さを取り戻したようでした。
小人たちは冷静に、ハンドパワー獲得の方法について考え始めたのです。

「でも、ということはだよ。修行を積めば、氷河にもはんどぱわ〜が使えるようになるんだ」
「厳しい修行だって、氷河なら平気だよね」
「僕たちの氷河は強いもんね」
「僕たちの氷河は偉いもんね」
「僕たちに大きなケーキを食べさせるために、厳しい修行にも耐えてくれるよね」
「氷河は僕たちを愛してくれてるんだもん」
「僕たちも氷河を愛してるんだもん」
「愛し合う僕たちと氷河に不可能なんかないよね!」

「賛成― !! 」× 15

「…………」

『賛成されても困るんだが……』――なんてセリフを、もちろん、氷の国の氷河は口には出しません。
氷の国の氷河は、小人たちに反対意見を言うことに慣れていないのです。

どちらにしても、小人たちは、氷の国の氷河の反対意見なんか聞く気はなかったでしょうけどね。






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