「素晴らしい! ハンドパワーもすごいですが、小人さんたちの可愛らしさといったら、ケーキ以上ですね! それでは、ぷりちームードの中、お別れです。まりっこさん、ありがとうございました! 皆さん、次回の奇跡をお楽しみにー!」

完璧なショーのラストを完璧に締めくくる、いつも通りの司会者さんの締めのセリフ。
司会者さんが、そのセリフを言い終わった時でした。
お皿の載ったテーブルに、あまり可愛くない何か大きななものが飛んできたのは。

それは、小人たちの出演を、舞台の脇ではらはらしながら見守っていた氷の国の氷河でした。
あんまり、小人たち(と自分の将来)が心配だったので、氷の国の氷河は、自分まで時空を超えて、テーブルの上に飛んできてしまったのです。

「おわわわっ !? 」
予定になかったハプニングに、司会者さんはびっくりです。
おそらく、ミスターまりっこショーの司会者さんは、お馴染みのセリフをいつも通りに言うことに慣れていて、あまり臨機応変なタイプの人間ではなかったに違いありません。

「はっはっはっはっは。驚かせてすみません。こっそり、はんどぱわーを使っていました。こちらは、氷の国の小人さんたちの下僕の氷の国の氷河さんです」
その点、まりっこはショーのプロ。
予定外のことにも、ちっとも驚きません。

「あ、どもども、お邪魔します」
氷の国の氷河は、テーブルの上で三つ指をついて、ぺこぺこぺことテレビカメラにご挨拶。
その様子がまた、氷の国の氷河には異様に似合っています。

「あ、内緒でハンドパワーを使ってたんですか。いやだなぁ、驚かさないでくださいよ。それでは、今度こそ、今週はこのへんで。皆さん、次週の奇跡をお楽しみに〜!」
氷の国の氷河がぺこぺこしている間に、なんとか態勢を整え直した司会者さんは、再び締めの言葉を口にしました。

エンディングテーマが流れ始めると、小人たちも、氷の国の氷河の肩や頭の上によじのぼって、お別れのご挨拶です。
「ばいばーい!」
「歯、みがいてね〜」
「お風呂入ってね〜」
「ケーキとファンレターは、氷の国宛にどーぞ!」
「来週も、また見てね!」

「はんどぱわ〜 !! 」× 15

ラストは、小人たちが小さな手を前に突き出して、可愛らしい決めポーズ。
大拍手と大歓声に包まれて、今度こそ、番組の収録は無事に終了したのでした。






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