「いや〜、小人さんたち、素晴らしかったよ! ほんとに舞台度胸があるというか、芸達者というか、このままウチの局の専属にしたいくらいだ!」

収録開始前までは不安で不機嫌で怒鳴ることしかできずにいたプロデューサーさんも、今は大満足でにこにこ顔です。
満面に笑みをたたえているプロデューサーさんの様子を見て、とんでもない失敗をしでかしてしまった氷の国の氷河も、ほっと一安心しました。
これでどうやら、氷の国の氷河は、テレビ局のトイレ掃除おじさんにはならずに済みそうでしたからね。

「可愛くて、固い友情に結ばれている僕たちに、不可能の文字はないよ。じゃあ、これでケーキの件はちゃらだね」
そんな氷の国の氷河とは反対に、9号は、この上首尾を当然の結果と受けとめているようでした。
氷の国の氷河と小人たちの、このへんの違いが、運命の神様に愛されるかそっぽを向かれるかを決めているのかもしれません。

「もちろんだ。しかし、それとは別に、ぜひ、我が局と契約を……」
「よし、これで仕事は済んだ。さあ、みんな、急いで氷の国に帰ろう!」
運命の神様に溺愛されまくりの9号は、妙にせかせかしています。
そんな9号を見て、他の小人たちは首をかしげました。

「どーして、そんなに急ぐの?」
「もう少し、まりっことお話してようよー」
「だめ! 今の番組を見た人が、僕たちの可愛らしさに感激して、さっそく氷の国にケーキを送ってくれるかもしれないからね」
「あ、受取人がいないと大変だね」
「再配達なんてことになったら、ケーキの鮮度が落ちるもんね」
「よし、急いで、氷の国に帰ろう!」
「おーっっ !! 」× 15

小人たちの心はいつもひとつで、即断即決。行動迅速、疾風怒濤。

「あっ、小人さんたち、行かないでー !! 」
プロデューサーさんの悲鳴をその場に残し、小人たちの姿は、あっと言う間にその場から消えてしまっていました。
もちろん、小人たちの後を追う氷の国の氷河も同様です。

なにしろ、ケーキが呼んでいるんですからね。
小人たちが急ぐのは当然のことでした。






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