「ああ、心配かけたな、おまえたち」
チョコレートケーキ1個で人心地ついた氷の国の氷河は、小人たちを肩に乗せて、自分の足で立ちあがりました。

「氷河、ペルセウス特急便のおにーさんが、氷河を助けてくれたんだよ。ちゃんとお礼言って!」
そんな氷の国の氷河の右肩に乗っていた9号が、氷の国の氷河に彼の命の恩人を紹介します。
それがちょっと厳しい命令口調だったのは、瞳にまだ残っていた涙を隠すためでした。

「あ、これはどーもどーもありがとうございます。ご恩は一生忘れません〜」
小人たちの命令には無条件で従う癖がついている氷の国の氷河は、すぐにペルセウス特急便のおにーさんにお礼の言葉を言って、ぺこぺこと何度も頭を下げました。

そんな氷の国の氷河を、ペルセウス特急便のおにーさんが無言でじっと見詰めます。
ペルセウス特急便のおにーさんには、異様に腰の低いこんな男が、利発で可愛い小人たちを一人占めできている理由が、まるでわからなかったのです。

「――?」
対して、氷の国の氷河の方は、ペルセウス特急便のおにーさんの無言と不審の眼差しの訳がわかりません。
もしかしたらお辞儀の数が足りなかったのかと考えて、氷の国の氷河は、再びぺこぺこぺこと頭をさげてみたのです。

まるで、氷の森のキツツキみたいな氷の国の氷河の様子に、ペルセウス特急便のおにーさんは呆れ顔。
「あ、いや、大したことじゃないから。じゃあ、俺は仕事があるから。可愛らしい坊やちゃんたち、またね」
彼は、とりあえず、得体の知れないキツツキ人間は無視することにしました。

「ペルセウス特急便のおにーさん、ありがとー!」× 15

そういうわけで、手際良く大型トラックの荷台を空にしたペルセウス特急便のおにーさんは、ぱらっぱらっぱらっぱー♪ と派手にクラクションを鳴らして、氷瞬城の前から走り去っていきました。

氷の国の氷河を助けてもらった小人たちは、ペルセウス特急便のおにーさんに心から感謝して、おにーさんのトラックを見送ったのでした。






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