さあ、ここからが勝負です! いつもだったらここで、小人たちが、氷の国の氷河が頭の上にかかげたボストンバックの上でダンスを踊って、運転手さんの気をひくのですが、今日はそれができません。 氷の国の氷河が自分でダンスを踊るしかないのです。 氷の国の氷河は深呼吸をひとつしてから、道の真ん中に飛び出しました。 そして、いつの日にか合体瞬に披露するために練習していた求愛ダンスを踊りだしました。 左腕をばっさっさっ、右腕をばっさっさ☆ のあれです。 近付いてくるトラック。 決死の表情で、求愛ダンスを踊る氷の国の氷河。 近付いてくるトラック。 気が違ったように、求愛ダンスを踊り続ける氷の国の氷河。 近付いてくるトラック。 命も捨てる覚悟で、求愛ダンスを踊りまくる氷の国の氷河。 氷の国の氷河の哀れの体質を考えると、彼がその場でそのまま轢き殺されてしまっても誰も不思議には思わなかったでしょうが、近付いてきたトラックは、幸い、道路の真ん中で狂ったように踊っている氷の国の氷河のぎりぎり1メートルのところで、きききききききーっっ★ と、急ブレーキで止まってくれたのです。 「ばっかやろーっっ !! 轢き殺されたいのか、貴様―っっ !! 」 (氷の国の氷河にしては)なんという幸運でしょう! それは、石の国の黄金の勇者ミロが、スコーピオン特急便のおにーさんに身をやつして運転する派手派手大型トラックでした。 もちろん、スコーピオン特急便のおにーさんミロも、理想の配偶者探しのために、そんな仕事をしていたのです。 強面のトラックの運ちゃんに大声で怒鳴られても、ここで怖気づいてはいられません。 氷の国の氷河は必死で、スコーピオン特急便のおにーさんに、勇者らしく堂々と頼みました。 「すみません〜。でも、俺を石の国まで乗せてってください〜(ぺこぺこぺこぺ〜)」 「何だとーっっ !? 」 大きな怒鳴り声をあげてから、ミロは、見るからに哀れな氷の国の氷河をトラックの運転席からじろじろ眺め、そして、眉をひそめました。 哀れな男の必死の形相。 命も捨てた、人生も諦めたと言わんばかりの氷の国の氷河の悲愴な風情が、石の国の勇者ミロの心を打ったのです。 強い男は、なぜか、弱い者を助けるようにできています。 ミロは、道の真ん中でバカなことをしていた氷の国の氷河に呆れ果てているようでしたが、それでも、親切に彼をトラックの助手席に乗せてくれたのでした。 |