さて、氷の国の氷河とミロがエメラルドの湖に着いた時、瞬とアルゴルの姿は既にそこにはありませんでした。

「ああああ〜、瞬はどこへ行ったんだ〜」
「ちっ、遅かったか……」

ミロが舌打ちをする横で、氷の国の氷河は、落胆のあまり、がっくりと大理石の遊歩道に両手両膝をついてしまいました。

けれど、氷の国の氷河は、ここで絶望し諦めてしまうわけにはいかなかったのです。
何といっても、合体瞬(=小人たち)は、彼の reason to be でしたから。

「あの〜、すみません。ちょっとお伺いしたいんですが〜」
氷の国の氷河は必死の思いで立ち上がると、合体瞬の行方を掴むために聞き込みを開始しました。

「あいよ。なんだい」
エメラルドの湖のほとりに軽トラックの屋台を出していたクレープ屋のおじさんが、気のいい返事を返してきます。

「とっても可愛らしい緑の髪をした子と、勇者のアルゴルを見ませんでしたか?」
「ああ、来たよ。アルゴル様が可愛いお連れさんに、うちのバナナチョコカスタードクレープを買ってくれたよ」
「そ、そうですかっ! で、二人はどちらへ行きました?」
「確か、金銀パール公園に行くとか言ってたと思うよ」
「金銀パール公園ですね。どうもありがとうございます〜」

氷の国の氷河はあくまで礼儀正しくお礼を言って、クレープ屋のおじさんにぺこぺこ頭を下げました。
対照的に、ミロは、聞き込み捜査に苦心する現場の部下から報告だけを受ける本部の警視監か警視総監然としています。

(次は金銀パール公園か……。アルゴルめ、デートスポット総当りをする気か)

現場の部下には、けれど、そんな現実を理不尽だと感じる余裕もありません。
「瞬〜! すぐ行くぞ〜。待っててくれ〜」
氷の国の氷河は、クレープ屋のおじさんからの情報をゲットすると、すぐに愛する合体瞬を目指してその場から駆け出しました。

そして、
「おい、氷の国の氷河! そんなに慌てると……」
『コケるぞ』というセリフをミロが言う前に、氷の国の氷河は、お約束通りに、遊歩道の真ん中でコケていました。

氷の国の氷河は、律儀なまでにお約束に忠実な男でした。






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