「さあ、これがサファイアの時計台だ。綺麗だろう?」
「わあ、ほんとだ。サファイアで飾られてるー!」

(むっ、アルゴルの声だ。ということは――)

ミロはアルゴルなどには見向きもせず、光速の動きで、その隣りにいる合体瞬に視線を走らせました。
そして――もちろん、お約束通りに、合体瞬に一目惚れしてしまったのです。

(おおおおおっ、これは聞きしに勝る可愛子ちゃん! 氷の国の氷河なんてアホはもちろん、アルゴルにだってもったいない! この子は俺のためにこの世に生まれてきてくれたんだ!)

勝手に合体瞬を自分の運命の恋人に決めてしまったミロは、急いで合体瞬の側に走り寄りました。

「ほら、瞬。見てごらん、からくり仕掛けが動きだすぞ」
とか何とか言いながら、アルゴルが何気に合体瞬の肩に手を置きます。
そうはさせじと光速の動きでその手を払いのけ、代わりに、ミロは、自分の手を合体瞬の肩に置きました。

アルゴルはといえば、突然手が払いのけられたことに驚きながらも、今は突然割り込んできた男に文句を言っている暇はありません。
とにかく、彼は、からくり仕掛けが動き始めるその時に、合体瞬の恋人として、その肩を抱いていなければならなかったのです。

そういうわけで。
一般人には到底見切ることのできないスピードで、瞬の肩をめぐっての争いが繰り広げられ始めました。

びしっ☆
ぱしっ☆
びし、ぱし、ぺし、ぱぱぱっ☆

そのあまりのスピードに、合体瞬は、自分の肩の上で、恐ろしく高レベルな争いが展開されていることに気付きもしませんでした。

光速レベルの闘いには気付きもしない合体瞬は、けれど、自分たちからちょっと離れたところに、ぬぼ〜っ★ と突っ立っている氷の国の氷河にはちゃんと気付いたのです。


「氷河―っっ !! やっぱり来てくれたんだねっ! わーい!」

歓声をあげて、合体瞬が氷の国の氷河の胸に飛び込んでいった、まさにその時! 
サファイアの時計台の1日1回限定のからくり仕掛けが動き始めたのです。

「わ、氷河、見て見て。時計の小さな扉から、小さなお人形さんが出てきて、ダンスしてるよっv」
「しゅしゅしゅ瞬〜 !! しっしっしっ心配したんだぞー !! 」

自分の側にぴっとりとくっついている合体瞬に動悸・息切れ・発熱・目眩を覚えながら、それでも氷の国の氷河はやっと再会できた合体瞬の無事な姿を見て、感激の涙に暮れました。

サファイアの時計台のからくり仕掛けも、氷の国の氷河には涙で霞んで見えたのでした。






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