氷の国の氷河が、彼の最大にして最高にして最強の拳、オーロラ・カウントレス・フォーエバー・フローズン・刺繍ニードルを放とうとした、その時でした!
合体瞬の身体がまばゆい閃光に包まれ、次の瞬間!


「僕たちの氷河に何するんだーっっ !! 」
「おやつたくさんくれる、いい人だと思ってたのにーっっ !! 」
「バナナチョコカスタードクレープ買ってくれる優しい人だと思ってたのにーっっ !! 」
「スーパートリプルジェラートもおごってくれて、気前のいい人だと思ってたのにーっっ !! 」
「僕たちの氷河をここまで連れてきてくれた、親切なおじさんなんだろうと思ってたのにーっっ !! 」

(お……おじさん !? )
突然その場に出現した15人の小人たちにおじさん呼ばわりされてしまった黄金の勇者ミロは、ショックを隠しきれませんでした。

怒りに燃えた小人たちは、けれど、ミロの受けたショックになど気付きもしません。
気付いても、小人たちは『おにーさん』に訂正なんかしなかったでしょうけどね。

「なのに、悪い人だったんだ!」
「悪い親切なおじさんだったんだ!」
「僕たちの氷河に、こんなことするなんて!」
「みんなっ! 前置きはどーでもいいよっ! 悪い人は懲らしめなくちゃ!」
「そーだ、懲らしめなくちゃ!」
「いっぱいいっぱい懲らしめなくちゃ!」

合体が解けても、小人たちの心はひとつです。

「1号から7号はアルゴル、8号から15号は悪者の親切なおじさんに向かって、攻撃だーっっ!」
「おーっっ !! 」× 15

9号の号令一下、15人の小人たちが、
アルゴルに飛びついて、ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽー !! × 7
ミロに飛びついて、ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽー !! × 8

この思いがけない展開に呆けて、アルゴルは小人たちに為されるがままです。
もちろん、ミロも同上です。

ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽか × ∞

アルゴルとミロは、この状況が全く理解できず、よけることも忘れて、ちっとも痛くない小人たちのぽかぽか攻撃を受けるばかり。


そうしている間に。
神の域すら超越していた氷の国の氷河は、無事で元気な小人たちの姿を見た途端、喜びと安堵のためにへろへろへ〜と力が抜けて、いつも通りの情けない刺繍男に戻ることができていたのでした。






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