さて、その夜の、氷の国の氷瞬城・客用ベッドルームです。


「小人さんたちがかわいそう……。何かいい方法ないかな?」

たれたれ瞬ちゃんは、小人たちの行く末をとても心配していました。
たれたれ瞬ちゃんが氷の国にいる間は、こっそり差し入れすることもできますが、たれたれ瞬ちゃんだって、いつかはあったかい国に帰るのです。

そうなった時、小人たちは辛子明太子や辛口おみそ汁で命を繋いでいくことができるでしょうか。
『栄養があるから食べなさい』と言って、ニンジンが好きなウサギさんに松阪牛の霜降りステーキを毎日あげたって、ウサギさんは飢えて死んでしまうに決まっています。

「そうだな……。氷の国の氷河が小人たちに与えているのは、刺激じゃなくてストレスだ」
「氷の国の氷河さんも無理してる感じ……。フラストレーションためるのって良くないよね」

氷の国の氷河だって、本当は、甘いケーキに突進して幸福に酔っている小人たちの様子を見ている方が幸せなはずなのです。
それなのに……。

互いを大切に思い合っているはずの16人の心がすれ違ってしまっているという事実が、たれたれ瞬ちゃんの小さな胸を痛めていました。

「お前は……?」
「え?」

たれたれ氷河さんが、妖しい眼差しで、たれたれ瞬ちゃんに尋ねます。
「大丈夫か?」

たれたれ瞬ちゃんを心配するのは、たれたれ氷河さんの務めですからね。

「うんv」

たれたれ瞬ちゃん自身は、毎晩たれたれ氷河さんと甘い時間を過ごしていたので、ストレスは全然たまっていませんでした。


氷の国の氷河が、たれたれ氷河さんのように、お砂糖やシロップを使わずに甘い時間を作れる男だったなら、そもそも刺激計画なんて、最初から必要のないプロジェクトだったのです。



そんなわけで、小人たちとたれたれ瞬ちゃんのお風呂(でおやつ)タイムは、どんどん長くなる一方。

氷の国の氷河と小人たちの運命は、この先どういうことになってしまうのでしょう?