こういう時、いつもだったら、お利口な9号あたりが、氷の国の氷河の疑惑を深めないようにと、お風呂タイムの短縮化を図っていたことでしょう。 けれど、そんな理性も判断力も、今の小人たちからは失われてしまっていたのです。 お利口な9号でさえ、それは他の仲間たちと少しも変わりありませんでした。 禁じられた甘いおやつ。 秘密で与えられる甘いおやつ。 それは、禁断の果実を手にとる罪の興奮、タブーを犯す危険な喜び──なんかではありませんでしたが、とにかく今の小人たちにとって、たれたれ瞬ちゃんがこっそり食べさせてくれるお風呂場のおやつは、小人たちの生命力の源も同然だったのです。 翌日、ついに小人たちのお風呂タイムは4時間の新記録を越えました。 当然、氷の国の氷河は心配になって、様子を見にお風呂場へ行ったのですが、お風呂場の入り口には、既にたれたれ氷河さんが来ていました。 小人たちの秘密を氷の国の氷河に知られないようにガードするため。 そして、4時間もの長きに渡ってお風呂場から出てこないたれたれ瞬ちゃんを心配して。 「おい、どこへ行く」 お風呂場に入って行こうとする氷の国の氷河を、たれたれ氷河さんは、その腕を掴んで引き止めました。 「小人たちが、もう4時間も風呂からあがってこないんだ。様子を見てみようと思って」 「なら、俺が見てこよう」 それは、たれたれ氷河さんとしては、当然の提案です。 だというのに、氷の国の氷河は、日頃の恩も忘れて、たれたれ氷河さんに疑惑の視線を向けたのです。 「おまえ、俺の小人たちの裸を見るつもりだな」 「…………」 氷の国の氷河の言葉と疑惑の眼差しに、たれたれ氷河さんは、もちろん、大いに呆れました。 小人たちのぬーどなんて、たとえ、目を皿のようにして、その皿に穴が開くほど見詰めたところで、邪心の湧いてくる類のものではありません。 しかし、いかに自分の愛と恋の恩人と言えど、氷の国の氷河は、こればかりはたれたれ氷河さんに譲る気持ちはないようでした。 「俺の小人たちだ。俺が見てくる!」 「貴様こそ、俺の瞬の裸を見ようとしているんじゃないのかっ !? 」 いくら相手が父性全開の氷の国の氷河でも、仮にも、とりあえず、一応、それでも、男は男。たれたれ氷河さんも心配ですよね。 「何を言ってるんだっ! 俺がよそんちの瞬ちゃんに、そんなヨコシマな気持ちを抱くわけがないだろうっっ !! 」 「俺が小人たちの裸を邪まな目で見るなんてことを考えるような奴の言葉は、信用できん」 「お互いさまだっ !! 」 氷の国の氷河はいつになく強気です。 氷の国の氷河は、小人たちの貞操を守るために必死だったのでした。 あの、ふくふくと可愛い小人たちの餅肌を見たら、クールが身上のたれたれ氷河さんだって、つい魔がささないとも限りません(魔がさしたとして、たれたれ氷河さんが小人たちに何をするのかはわかりませんが) けれど、それは、たれたれ氷河さんも同じこと。 ここは一歩も譲れません。 二人の氷河は、お風呂場に続くドアの前で、火花を散らして睨み合いました。 あげく、ドアの前で、互いをお風呂場に入れまいとして、押しのけ合ったり、引っ張り合ったり。 「そこをどけっ !! 俺の小人たちが湯当たりして倒れているかもしれないんだっ !! 」 「貴様こそ、どいてろ! 俺の瞬の介抱は俺がするっ!」 そんな小競り合いを、5、6分も続けたでしょうか。 お風呂場の前で揉み合いになった二人は、何かの弾みで、お約束通りに、脱衣所に倒れ込んでしまうことになったのです。 |