「次の時間はなあに?」 平然としているのは、たれたれ瞬ちゃんだけでした。 穏やかな野原に、少し風が出てきたようです。 「た…体力テストの次は、非常時における勇気の授業だ。俗に言うだろう、『義を見て為ざるは勇な──」 「あ、それなら僕もお手伝いできるよ♪」 嬉しそうに微笑んで、たれたれ瞬ちゃんはたれたれ氷河さんの言葉を遮りました。 たれたれ瞬ちゃんは、自分が誰かの力になってあげられることが嬉しくてたまらないのです。 まして、それが、正視していると辛くなってくるほど哀れな氷の国の氷河のためとあれば。そして、氷の国の氷河のため イコール 小人たちのためとなれば。 心優しいたれたれ瞬ちゃんが張り切るのは当然です。 「な……何を手伝うって?」 この場を仕切っているのは、完全にたれたれ瞬ちゃんでした。 たれたれ瞬ちゃん以外の17人はみんな、戦々恐々状態です。 たれたれ氷河さんでさえ、声が少し震えていました。 「義を見て為ざるは……でしょ。大丈夫♪ いきますよ、氷の国の氷河さん!」 言うが早いか、たれたれ瞬ちゃんは、氷の国の氷河に飛びかかりました。 そして、なんと! たれたれ瞬ちゃんは、氷の国の氷河に寝技をかけ始めたのです !!!! 「 !!!!!!!!!!!!!!!! 」 「 !?!?!?!?!?!? 」 「 ??????????? 」 まるで、世界が死滅してしまったような、一瞬の静寂。 その静寂のあと、のどかだった野原は、阿鼻叫喚の巷と化しました。 「こっこっこっこら〜〜っっ !!!!!! はっ離れんか、貴様〜〜っっ !!!! 」 クール&セクシーが売りのたれたれ氷河さんが動転し、混乱のあまり、怒りの矛先を氷の国の氷河に向けています。 「ぶくぶくぶくぶくぶく……」 氷の国の氷河は、口から泡を吹いて、ショック死寸前。 「わ〜ん、たれたれ瞬ちゃん、やめてよぉーっっ !!!! 」 「氷河、白目になっちゃってるよぉ〜っっ !!!! 」 小人たちは、小さな手で、瀕死の氷河を必死に揺さぶりながら、涙涙の訴えです。 お花でいっぱいの野原に、たれたれ氷河さんの怒声と小人たちの悲鳴が飛び交う中、たれたれ瞬ちゃんは、たっぷり5分間は氷の国の氷河に寝技をかけたままでした。 その5分が過ぎると、たれたれ瞬ちゃんは、どんぐりを見つけた小リスが喜び跳ねるようにして立ち上がり、お洋服についた草の葉っぱをぽんぽんと払い落としました。 「義を見て為ざるは勇なりき。技をかけてきた相手にやり返さないで耐えるのが、真の勇気なんだよねv 氷の国の氷河さん、すごいね、一発合格だね! ねっ? 氷河」 たれたれ瞬ちゃんに、にっこり笑ってそう言われたら、たれたれ氷河さんはもう頷くしかありませんでした。 加害授業2時間目、つつがなく(?)終了。 果たして、氷の国の氷河は、たれたれ瞬ちゃんの加害授業を生きて終えることができるのでしょうか?
いよいよ加害授業も3時限目──の前に、2時限目の補習をどうぞ。
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