「氷河ったら、授業の教材を忘れてくるんだから。僕、気をきかせて持ってきてあげたんだよ」 ウイルスと氷の国の氷河の父親化に何らかの関連があるのかないのかは、たれたれ瞬ちゃんには、それこそ関係のないことのようでした。 「…………」 たれたれ氷河さんは、全く訳がわかりませんでした。 そもそも、たれたれ氷河さんのパソコンはウイルス対策が万全だったのです。 アンチウイルスソフトのデータベースサイトを毎日チェック、ウイルスのパターンファイルも常に最新状態にしてあります。 悪玉ウイルスを退治する善玉ウイルスでもバラまいてやろうかなんてことを、(ちょっとだけ)真剣に考えてしまうほど、たれたれ氷河さんのウイルスに関する知識と対策はレベルの高いものでした。 そのたれたれ氷河さんの完璧防御パソコンが、もう何年も前に流行った、時代遅れもいいところのウイルスをもらってしまったなんて、たれたれ氷河さんのプライドはずたずたです。 「氷河、夕べはカリキュラム作りで大変だったでしょう。だから、僕、ピクニックの準備が終わったあと、ちょっと退屈で、氷河のパソコンをちょこちょこいじってたの。そしたら、急に、パソコンに繋がってたケータイ電話がぴこぴこ光りだして、氷河がカリキュラムの下書きに書いてたのと同じぐるぐる渦巻きが画面に出てきたんだ。僕、氷河はこれで氷の国の氷河さんをテストするつもりなんだって、すぐわかったよv」 たれたれ瞬ちゃんは、ちょっと得意そうです。 もちろん、得意がっていいのです。 WORM−HYBRIS−P33は、最近ではちょっとお目にかかれない、貴重なウイルスですからね。 けれど、残念なことが一つだけ。 その渦巻きは、氷の国の氷河・脱父親化計画とはまるっきり関係のないものでした。 カリキュラムの下書きのぐるぐるは、カリキュラム作成中のたれたれ氷河さんが、氷の国の氷河の不甲斐なさに苛立って思わず書いてしまった、ただの落書きだったのです。 いずれにしても、たれたれ瞬ちゃんを退屈させるようなことは金輪際するまいと、たれたれ氷河さんは堅く決意したのでした。 |