この難関を難なく切り抜けることができたら、それは氷の国の氷河の偽者です。

どうすればいいのかわからずに、ぬぼ〜っっ★ とその場に突っ立っているだけの氷の国の氷河は、確かに本物の氷の国の氷河でした。

が、そんなふうに、のんびりと、氷の国の氷河が氷の国の氷河の証明をしているその時、ぐるぐる渦巻きパソコンの前では、大惨事が起きていました。
パソコン画面のぐるぐる渦巻きを見ていた小人たちが、みんな、渦巻きのせいで目を回して、ふらふらふらのばたんきゅー☆

何ということでしょう!
たれたれ瞬ちゃんの加害授業は、ついに小人たちをも巻き込むことになってしまったのです!


「こ…小人さんたち、大丈夫 !? どうしたのっ !? おやつは食べたばかりじゃない。おなかがへって倒れるはずなんかないのに……!」
ぐるぐる渦巻きパソコンの前で死屍累々している小人たちの惨状の原因がわからず、たれたれ瞬ちゃんは、とても心配そうです。

「おまえたち、大丈夫かっ !? 」
たれたれ瞬ちゃんを責めることもできない氷の国の氷河は、心の中で号泣していました。


たれたれ瞬ちゃんは、けれど、すぐに気付いたのです。
この渦巻きこそが惨状の原因であり、そして、それは、たれたれ氷河さんによって仕組まれた予定通りの現象なのだと。

「そ…そっか、これが非常時のテストなんだねっ! 氷の国の氷河さん、人工呼吸だよ! 倒れている小人さんたちに人工呼吸をして、生き返らせてあげるんだ!」

「じ…人工呼吸 !? 」

『自分の人差し指サイズの小人相手にどーやって?』と悩みはしましたが、氷の国の氷河は、小人たちのためなら少しは(ほんの少しでしたが)機転をきかせることもできました。
氷の国の氷河は、野原にたくさん生えているスズメのテッポウ(茎がストローみたいになってる野草です)を採ってきて、15人の小人たちに、それぞれ、ふーふー息を吹きかけてみたのです。
もちろん、全く、少しも、全然、効果はありませんでしたが。


「このままじゃ、小人さんたちが死んじゃう!」
たれたれ瞬ちゃんは、心配のあまり泣き出しそうです。

「いや、小人たちは単に……」
『目をまわしているだけだ』の一言を、たれたれ氷河さんは、けれど、言葉にしてしまうことができませんでした。

たれたれ瞬ちゃんの真剣な眼差し。
必死の形相で、小人たちにふーふー息を吹きかけている氷の国の氷河。
これは、どうしたって、真実を告げることができる雰囲気ではありません。


「小人さんたちっ! 小人さんたち、合体してっ! 合体しないと、小人さんたち、死んじゃうよ! 小人さんたちが死んじゃったら、氷の国の氷河さんが泣いちゃう!」
氷の国の氷河の吹きかける息が、小人たちの顔の上を撫でているだけなことに気付いたたれたれ瞬ちゃんは、無意味な人工呼吸をやめさせられる素晴らしいアイデアを思いつきました。


朦朧とした意識の中で、小人たちが、たれたれ瞬ちゃんの切羽詰った訴えに反応します。

「僕たちの氷河が……」
「泣いちゃう……?」
「僕たちのせいで……」
「そんな……」

「そんなのだめーっっ !!!! 」× 15



ぴかーっっ☆☆ !!!!



途端に!

氷の国の野原は、一瞬、まるでウルトラマンが変身する時のように眩しい光で包まれました。


そして、その光が消えたあとには──。