それは、7月も終わりかけたある夏の日。
地球のうんとうんと北の方にある氷の国は、ちょうどさくらんぼの季節でした。

さくらんぼの木を知っていますか?
おいしいさくらんぼのなるさくらんぼの木は、とってもとっても大きいんですよ。


氷の国にある氷の森の近くに、そんなふうに、おいしいおいしいさくらんぼのなる、大きな大きなさくらんぼの木が1本ありました。


小人たちは、さっきからずっと、大きな大きなさくらんぼの木の下で、たわわに実ったさくらんぼを、指をくわえて見上げていました。

「さくらんぼ、食べたいねぇ」
「さくらんぼ、たくさんなってるねぇ」
「さくらんぼ、おいしそうだねぇ」
「でも、毛虫は怖いねぇ」

「うん……」× 15 


毛虫はとっても怖いです。
でも、それ以前に、小人たちは、大きな大きなさくらんぼの木に登ることができません。
なんってったって、そのさくらんぼの木は、氷の国の氷河の10倍も大きな木。
氷の国の氷河には登り慣れている小人たちも、その木の高さにはお手上げでした。


けれど、切ない目をしてさくらんぼを見上げている小人たちの可愛い姿に目をとめてくれた親切なひとがいたのです。
それは、遠い南の国から、この氷の国まで飛んできた、旅のツバメさんでした。

「もしもし、そこの可愛い小人さんたち、何かお困りですか?」

「あっ、ツバメさんだ」
「あのね、あのね、僕たち、あそこになってるさくらんぼが食べたいの」
「でも、木には登れないし」
「毛虫は怖いし」
「食べたくても食べられないの」


小人たちが自分たちの窮状を訴えますと、親切なツバメさんは言いました。
「なるほど。そういうことなら、私に任せてください。ちょいとつついて、実を落としてあげましょう」

「わ〜い、ありがとうツバメさん!」× 15


旅のツバメさんの親切に、小人たちは大喜びしました。