9号の悲しい話を聞いて、切なく沈んでしまった天高く栗実る秋のすがすがしい空気。
けれど、そのどんよりした雰囲気を吹き飛ばしたのもまた9号でした。

「でも、僕にはちゃんと見えている! 僕は、今、重大な発見をしたよ!」
「えっ?」× 14
急に威勢のいい大声をあげた9号に、仲間たちはびっくり。
仲間たちの驚いた様子を気にもとめず、9号は言い募りました。

「僕、栗のイガイガを見ながら、これって、お金儲けの種にならないかなぁって考えてたんだけどね」
「なーんだ。9号ったら、テツガクテキなことじゃなくて、ケーザイテキなことを考えてたんだね」
「9号だもんね」
「え? 何か言った?」
「なんにも言ってませーん」× 14

なんだかとっても9号らしい言葉にちょっと安心して、小人たちはぷるぷるぷると首を横に振りました。
9号も、重大な発見の発表を急ぎたいのか、些細なことにはこだわらず、話を先に進めます。
「うん、でね。僕、あのイガイガに金色の髪がひっからまっているのに気付いたんだ」
「え?」× 14

それは、確かに、新しい発見です。
今、氷の森に落ちている栗のイガイガは全部、親切でくさい金色の英雄さんが落としてくれたイガイガでしたから、そのイガイガに小人たちのものとは違う髪の毛がひっからまっていたのなら、それは親切でくさい金色の英雄さんのものということになります。

「へぇ〜。てことは、親切でくさい金色の英雄さんは、金髪なんだ」
「知らなかったねー」
「金色の英雄さんは、とっても親切だけどくさいから、あんまり側に近寄らないようにしてるもんね。これまでじっくり見たことなかったね」
「金髪かぁ……。僕たちの氷河とおんなじだね」
「道理で親切なわけだね」
「くさいけどね」

「僕の重大発見の発表は、これからだよ!」
話題が脱線しがちな仲間たちに注意を喚起して、いよいよ9号の重大発見の発表です。
そして、それは、秋の色に染まった氷の国の氷の森で、高らかに、かつ、実にあっさりと発表されました。
「僕、じっくり見ているうちに気がついたんだけど、その金髪の端っこにサツマイモジャムがついてたんだ」

「あ、僕、サツマイモのジャム、大好き〜」
「僕たちの氷河の作るサツマイモジャムは最高だよね!」
「木イチゴのジャムもおいしいよ」
「梅のジャムは今いちだけどね」
「すっぱいもんね」

おいしくて甘いお話には目のない小人たち。
小人たちは、もちろん、サツマイモジャムも大好きでした。