実は、最近、氷の国の氷河はジャム作りに凝っているのです。

氷の国は自然が豊かで、森に行けば、栗だけでなく、木イチゴやコケモモやプラムやリンゴがたわわに実っています。
これを有効利用しない手はないと最初に考えたのは、もちろん、氷の国の大蔵大臣9号でした。
そして、小人たちの喜ぶ顔を見るためになら、どんなことでも死ぬ気でやってのけるのが氷の国の氷河です。
“器用貧乏”が売りの氷の国の氷河のジャム作りの腕前は、それはもう! あっという間にプロ級になりました。

今では、氷の国の氷瞬城の地下の倉庫には、イチゴやブルーベリーやオレンジみたいなポピュラーなジャムに始まって、ブドウ、コケモモ、ラズベリー、プラム、おリンゴ、サツマイモ、アンズにキウイにカボチャに桑の実、果てはニンジンやホウレン草のジャムまで、色とりどりのジャムのビンがぎっしり並んでいるのです。

「そういえば、今朝の朝ごはんはサツマイモジャムを塗ったお焼きだったね」
「食費が足りなくて、パンケーキのお粉が買えなかったんだって」
「でも、いいよね。ただの水溶き小麦粉を焼いたお焼きでも、氷河の作ったジャムをつけると、たちまち最高級のデザートだもん」
「おいしかったねー」
「うんうん、おいしかったねー」× 14

氷の国の氷河のサツマイモジャムは天下一品です。
今朝の朝ごはんの甘〜いサツマイモジャムお焼きの味を思い出した小人たちは、みんな一緒にふわわん気分。
とんがり頭の栗の実を抱きしめたまま、ふわふわとお空に飛んでいってしまいそうな仲間たちに、けれど、9号は重々しい口調で言ったのです。
「金色の英雄さんの残していった金髪についてたサツマイモジャムは、氷河の作ったサツマイモジャムとおんなじ味がした」
「えええええっ !? 」× 14

それはいったいどういうことなのでしょう。
親切でくさい金色の英雄さんの髪に、氷の国の氷河の作ったサツマイモジャムがついていたなんて。

「そ……それって、僕たちの氷河が、金色の英雄さんに、僕たちのサツマイモジャムを食べさせちゃったってこと?」
「氷河が、僕たちに内緒で、お友だちを作ってるの?」
「僕たちの氷河が、僕たちに秘密を持ってる……」
「僕たちと氷河の間に、秘密なんかあっちゃいけないのに……っ !! 」

9号の重大発表は、あまりにも衝撃的すぎました。
小人たちは全員大ショック。
金色の銀杏の葉っぱが舞い散る金色の氷の森で、小人たちはただ呆然と、大きくてつやつやの栗の実を抱きしめるばかりだったのです。