「氷河―っ!」× 15

かぐわしいぎんなんの匂いが消えて、氷の国の氷河が石鹸の匂いだけになった時、ちょうど氷の国の小人たちが、氷の国の氷瞬城に帰ってきました。
氷の国の氷河はくんくんと自分の匂いを嗅いで、かぐわしい匂いがすっかり消えていることを確認してから、小人たちをお出迎え。

「ああ、おまえたち。栗の実は手に入ったのか? 今年もたれたれ瞬ちゃんのところに、ケーキを作ってもらいに──」
「氷河、僕たちに隠してることがあるでしょう」
「ぎくっ」

別に悪いことをしているわけではないのですが、小人たちのその言葉に、氷の国の氷河の心臓は、彼の胸の中で大きく揺れ動きました。
小人たちがわらわらわらと氷の国の氷河の腕や肩や胸にとりついて、そんな氷の国の氷河を問い詰め始めます。

「氷河、僕たちのサツマイモジャムを、あの親切でくさい人にあげちゃったんでしょう!」
「隠しても駄目だよ。親切でくさい金色の英雄さんの髪に、氷河の作ったサツマイモジャムがついてたんだから!」
「僕たちの氷河は僕たちだけのためにジャムを作ってくれてるんだと思ってたのに……」
「だから、氷河がお台所に閉じこもってジャム作りに夢中になって、僕たちと遊んでくれなくても、僕たち我慢してたのに……」
「なのに、僕たちに秘密を作るなんてひどいー !! 」

「あーん、あーん、あーん !! 」× 15

泣くつもりなんかなかったのに、小人たちはいつのまにか、そのつぶらな瞳から涙をぽろぽろ零してしまっていました。
そして、ぽかぽかぽかぽかぽーと、氷の国の氷河の肩や胸や頭を叩き始めていました。

小人たちは、大好きなサツマイモジャムを親切でくさい金色の英雄さんに食べられてしまったことよりも、氷の国の氷河が自分たちに秘密を持っていることの方が悲しかったのです。
とてもとても、悲しかったのでした。